
悪人を倒せば世界が平和になるという映画は作らない――宮崎駿監督、映画哲学を語る
それで映画を作りながら、私たちはジブリで働いている人間のための保育園を作って
しまったのです。地方自治体から補助をもらうと、いろいろややこしいことがくっ付いて
きますので、好きなことをやるために、まったく企業負担でやることにしました。
実際に子どもたちを取り巻いている環境は、私たちのアニメーションを含め、バーチャル
なものだらけです。テレビもゲームもそれからメールもケータイもあるいはマンガも、つまり
私たちがやっている仕事で子どもたちから力を奪いとっているのだと思います。これは
私たちが抱えている大きな矛盾でして、「矛盾の中で何をするのか」をいつも自分たちに
問い続けながら映画を作っています。でも同時にそういう子ども時代に1本だけ忘れられ
ない映画を持つということも、また子どもたちにとっては幸せな体験なのではないかと思って、
この仕事を今後も続けていきたいと思っています。
子どもたちが字を覚える前に覚えなければいけないことがいくつかあって、これは石器時代
からやってきたことです。自分で火をおこして、燃やし続けて消すことができる、水の性質を
理解している、木に登れる、縄でものをくくれる、針と糸を使える、ナイフを使える。これだけ
は国が責任をもって子どもたちに字を教える前に教えなければいけないと思っています。
本当は国がやらなくても両親や地域社会がやるべきなんですけど、地域社会をこの国は
経済成長のために破壊してしまったので、それを時間をかけて取り戻さければならないと
強く思ってます。
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1102/09/news058.html